循環器というと少し耳慣れないかもしれませんが、主に心臓と血管の事を指しています。人間にとって必要な酸素や栄養は血液によって全身に運ばれます。またいらなくなった老廃物も血液によって回収されます。その際、血液を全身に循環させるポンプの役割を果たすのが心臓で、血液の通り道となるのが血管です。この心臓や血管に異常が起きてしまうのが循環器疾患です。

心臓の病気としては、狭心症や心筋梗塞、不整脈などがあり、血管の病気としては動脈硬化や動脈瘤などがあります。これらの病気は血管が詰まることで発症するものも多く、原因となる生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病など)への注意も必要です。

循環器疾患でよくみられる症状としては、胸の痛みや締め付けられるような違和感、動悸、息苦しさ、胸やけや冷や汗が出る、気が遠くなるなどがあります。こうした症状がある場合は、お早めにご受診ください。また健康診断で、高血圧や心電図での異常などを指摘された際もご相談ください。

おもな循環器の疾患

動脈硬化、不整脈、狭心症、心筋梗塞、心不全、心臓弁膜症、閉塞性動脈硬化症、大動脈瘤 睡眠時無呼吸症候群 など

※このほか、動脈硬化の原因となる生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症等)についても診療を行っています。
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不整脈

通常、一定のリズムで打たれている心臓の脈が運動や精神的な興奮、発熱などの原因によらず、速くなったり、遅くなったり、あるいは不規則になったりすることを不整脈と言います。不整脈は大きく徐脈(脈拍が1分間に50回以下になる)と頻脈(脈拍が1分間に100回以上になる)に分けられます。

不整脈の原因は、心臓を規則正しく動かすための電気信号が、何らかの理由でその流れに変化が生じることが考えられます。多くは疲労やストレス、加齢などによって起こり、明らかな心臓の病気ではない場合もあります。しかし、その背後に狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症などの重大な病気が隠れていることもありますし、放置しておくと重篤な病気につながることもありますので、何らかの症状を感じた場合、一度検査しておくとよいでしょう。

不整脈の検査としては、心電図による検査のほか、検査時には症状が現れていない場合もありますので、24時間装着して測定するホルター心電図による検査を実施することもあります。さらに心臓の大きさや動きを調べる胸部レントゲン検査や心臓超音波検査(心エコー)、また血液検査を行って、ほかに不整脈の原因となっている病気がないかどうかを調べます。

徐脈

徐脈では体を動かすと息切れがするようになり、めまいなどの症状が現れ、さらに目の前が真っ暗になって意識を失うこともあります。こうした症状がみられ、1分間の脈が40回を下回るような場合は、体内にペースメーカーを取り付ける治療を行うことを検討します。これは心臓の外から電気刺激を与えて拍動を正常にするもので、局所麻酔で取り付けることができます。

頻脈

頻脈では、突然ドキドキと感じる動悸の症状で気づくことが多く、吐き気や発汗、さらには徐脈同様、意識が遠のくといった症状が出る場合があります。これらの症状が重い場合は、抗不整脈薬の内服、もしくは不整脈の原因となっている心筋の一部を焼灼する「カテーテルアブレーション」という治療を行います。

また心房細動といって、心房が1分間に400~600回の速さで細かく震えるように動く状態があります。それによって心房内で血液がよどみ、血の塊ができて脳に飛び、脳梗塞を発症することがあります。治療では血の塊を作らないための抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)の服用に加え、不整脈をコントロールする薬物療法やカテーテルアブレーションを行います。

狭心症

狭心症は動脈硬化などが原因で心臓の周りにある冠動脈が狭くなることで発症します。冠動脈は心臓に栄養や酸素を供給する役割を担っており、狭くなって血流が悪くなると心臓が酸素不足となり、様々な症状が現れるものです。心筋梗塞とともに虚血性心疾患と呼ばれます。現れる症状としては、胸の痛み、圧迫感、しめつけられる感じなどがあり、また胸の痛みが放散して、歯の痛みや背中、肩の痛みとして感じることもあるため、歯科や整形外科を受診される方もみられます。

当初は、心臓が多くの酸素を必要とする運動時や何かの作業時にのみ症状が出ます。これを労作性狭心症といいます。休めば治まることが多いのですが、病状が進行していくと、安静時や排便時にいきんだ時など軽い労作でも症状が現れるようになり症状の持続時間も長くなります。さらに進行すると安静時を含め不定期に頻繁に症状が現れる「不安定狭心症」と呼ばれる状態となります。不安定狭心症は、冠動脈が完全に閉塞してしまう心筋梗塞の前触れの症状であると考えられています。

このほか、冠動脈に動脈硬化による狭い部分がなくても、冠動脈自体が痙攣・収縮(攣縮=れんしゅく)し、血流が悪くなって狭心症のような症状が出る「冠攣縮性狭心症」というものもあります。これは運動時・安静時を問わず起こりますが、とくに朝方の発作が多い傾向にあり、患者さんが「朝、胸が痛くて目が覚めた」という例も少なくありません。

治療については、動脈硬化によるものと冠攣縮によるものでは方針が異なります。動脈硬化により血管が狭くなっている場合は、カテーテルにより血管を拡げるステント治療を行ったり、狭窄部位の先にバイパスを掛ける冠動脈バイパス術を行ったりします。また冠攣縮による狭心症の場合は、血管の痙攣を予防する薬の内服による治療になります。

心筋梗塞

心筋梗塞は、動脈硬化などで狭窄してしまった血管に、血液やプラークと呼ばれる垢のようなものでできた塊(血栓)が詰まって血流が遮断され、発症するものです。心臓への血流が労作時などに一時的に不足して発作が起きる狭心症と異なり、胸部の症状が持続する時間が長いのが特徴です。そのため心筋に長時間酸素が供給されなくなることにより、心筋が壊死してしまいます。一度壊死してしまった心筋は元に戻りません。

心筋の壊死が広範囲に及ぶと、心臓のポンプ機能が低下します。さらに心不全になったり不整脈が出現したりし、命に危険が及びます。心筋梗塞の急性期では、一刻も早く遮断された血流を再開させることが重要で、胸部などの強い痛みが長く続く、また狭心症と同様に、放散痛として歯の痛みや背中、肩に痛みがある場合は、早急に救急車を呼ぶ必要があります。

心臓弁膜症

心臓弁膜症は、血液が逆流しないように心臓に備わっている4つの弁(三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁)の機能が低下することにより発症する病気です。これらの弁は心臓の4つの部屋の出口を仕切っていますが、弁の開きが悪くなると狭窄症と呼ばれ。血液が滞ってしまいます。また便がしっかりと閉じなくなると閉鎖不全症あるいは逆流症と呼ばれ、血液の逆流を起こしてしまいます。心臓弁膜症とは狭窄症や閉鎖不全症の一方もしくは両方がある状態です。

原因としては、加齢、リウマチ熱等の感染症、心筋梗塞の影響、外傷、先天性の異常などが挙げられます。当初は自覚症状があまりない場合もあり、健診等で心臓に雑音があることで指摘される場合もあります。また労作時の息切れ、かぜのような症状、下肢のむくみ、全身の倦怠感などの症状で発見されることもあります。場合によっては失神の発作も起こります。正確な診断や重症度を調べるためには、超音波による心エコー検査を行います。

心臓弁膜症は、そのままにしておくと次第に心臓に負担がかかり、心臓の機能が低下して心不全の状態となってしまいます。さらに心房細動や不整脈を引き起こす危険性もあります。また、心臓弁膜症では、心臓に細菌が棲みつきやすく、感染性心内膜炎に罹りやすいとも言われていますので注意が必要です。細菌によって弁が壊されると急激に症状が悪化する場合があります。

治療としては、心不全に至っている場合には、症状に応じて利尿剤、強心剤などの薬による治療を行います。しかし重症化していくと、心不全や不整脈が進行したり、腎臓や肝臓の機能が低下したりするなど、全身に障害が表れてきます。その場合は手術、またはカテーテルによる治療を行う必要があります。治療が遅れると心臓の働きが低下し、心不全を繰り返すことがありますので、気になる症状がある方はお早目にご相談ください。